アクタージュに罪はあるか。最終回掲載と連載終了を考える。
こんにちは東京ネームタンクのごとうです。東京ネームタンクは漫画のストーリー専門の組織、一人一人に代表作を作ってもらうべく日々活動をしています。つまり毎日がみんなの創作全肯定の日々です。
そこに来て『アクタージュ』原作者のマツキタツヤ先生の逮捕報道と連載打ち切りのニュース。全ての創作作品を肯定したい気持ちと、それでいいのか?という気持ちがぶつかり合って、ここ数日モヤモヤしたものを処理しきれていませんでした。
たくさんのRTもいただき、同じく受け止めきれていない人も多そうです。
本当に作品に罪はないのか
音楽業界で逮捕報道があり、CDの回収やWEB配信停止などが行われたことに対して、同じ創作活動の話でありながら、自分の中でどこか他人事にしてしまっていた部分がありました。ピエール瀧さんや槇原敬之さんの事件など記憶に新しいですね。
今回の件、原作者が逮捕された状況で連載が中止となってしまうことはどうにもならないと思うのですが、そこで残された『アクタージュ』という作品について、どのように接していけばいいのか。正直かなり戸惑っています。
『アクタージュ』は漫画家にとってとても意欲的な表現が多く、以前僕も記事を書かせてもらいました。しかし今、この作品を学びになるからと言って手放しに勧めていいものなのか、答えが見つかりません。
罪を犯した人間の作品をどう扱うか。実感を持って考える機会になりました。実際、電気グルーヴや槇原敬之さんの作品が回収されたこと、皆さんはどのように捉えたでしょうか。
きっと作品に少なからず罪はある(現状では)
ピエール瀧さんが麻薬取締法で逮捕された時、松本人志さんが「ドーピング作品になるから公開して欲しくない」という発言をして話題になっていました。
ものの例えと分かってはいますが、やはり僕は創作活動と、ドーピングが問題となるスポーツとは別だと思います。
誤解を恐れず言うなら、僕は創作は「スポーツマンシップ」とか「健全」とかである必要はないと思うんです。人の道を踏み外さざるを得なかった人間が残した創作物を、ルール違反だからと言って葬っていいのでしょうか。
ドラッグに手を出してしまうのは、おそらく心に何か抱えた強くない人間だと思います。そこにある追い詰められた心境から出てきた表現を、尊重できなくて何が創作者だと思ってしまいます。
しかしでは、作品はとにかく尊いもので、罪はないと言えるのでしょうか。
犯罪者として捕まった親がいたとして、その子供を責める人はいません。作品を子供と考え、同様に子に責任はないと言うのは分かります。でももし仮に、その子が親を庇ったり擁護していたらどうでしょうか。
きっと被害者は作品も憎い
薬物系の犯罪と違い、今回の事件は強制わいせつ。被害者がいます。被害者の方にとって、加害者の作品は、きっと許せないものだと思います。
例えば僕が殺人を犯したとして『僕が殺人を犯すまで』と言う漫画を描いていたとしたら、きっとかなり注目され、おそらくヒットするんじゃないかと思います。僕は懲役になるかもしれませんが、模範囚として早めに出所してしまうかもしれません。
出てきたときには印税が山ほど振り込まれています。遺族にはそこから(直接的には)全く入らない。架空の話で良かった…と思うほど被害者に苦しい状況です。被害者からしたら、作品を買う人みんな敵に思えるのではないでしょうか。
作品はその作者のものなので、その作品を買うということは、どうしてもその作者を間接的に応援することになってしまいます。今『アクタージュ』をKindleその他電子書籍で買えば、電子印税がマツキ先生にも入るでしょう。
被害者の視点になると、加害者を有利にする訳ですから「作品にも罪がある」状況だと思います。このことこそ解決すべき大元の問題ではないでしょうか。
法を犯した場合、作者と作品を切り分けて欲しい
例えば、判決が出て、例えば罪を償うまでの任意の期間は、加害者の作品からの収入はすべて被害者の補償や犯罪の再発防止に当てられる。こんなルールがあって欲しいと思います。
作品を応援することが、直接的に加害者の応援に繋がらず、むしろ被害者の支援に繋がる。そういう状況であって初めて、作品に罪はなくなる。
犯罪者の子供が、親から隔離され保護されるように、親が子供(作品)を有利に使える今の状況は、避けられるべきではないでしょうか。
今回の場合は共作の宇佐崎しろ先生のこともあります。これで『アクタージュ』の既刊の販売も中止になったら、宇佐崎先生がこれまで懸けてきた時間はどうなるのでしょうか。
ピエール瀧さんの映画の件も、映画配信が中止となり、関係者が全員巻き込まれるというのは厳しすぎると感じます。加害者の本質を見抜けなかった…という過失はあるのかもしれませんが、それによって失うものの大きさが、過失と見合っていると思えません。
アメリカには「サムの息子法」という獄中出版をした場合に印税が被害者に入る法律があるそうです。日本でもルールが定まらない限り、残念ながら僕は『アクタージュ』を押すことができませんし、心のモヤりも晴れないと思います。
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