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漫画家になるには|考えるほど描けなくなる…キャラクターの罠 #015

こんにちは!東京ネームタンクのごとうです。
先日「まんが奨励会」の定期講座である「スクリプト基礎コース」を開催しました。いつも取り扱う作品は事前に講師勉強会でしっかりと精査と確認をします。今回の作品も5時間くらい講師と読み込みました。

今回やや反省点があって…直前の講師勉強会に熱が入ったことで「まんが奨励会」への頭の切り替えがうまくいかず、「まんが奨励会」でも「添削で気をつけるべきこと」を少し押しすぎたな…と思ってます。みなさんそれぞれの作品にどう活かすか、ということをもうちょっと補足するべきでした。

この記事で改めてみなさんそれぞれ、自分自身への注意点をお話しします。

今回の作品は、作者さん自身が自分の課題点に気づいているコメントをくださってました。ですので「そこが課題だ」と言われても「もう分かってるのに…」となってしまいます。分かっていてもできない課題点をどう乗り越えるのか、お話ししていきます。

「キャラのことをよく考えて」に注意したい

「キャラクターの気持ちを作者自身がよく分かってないから、キャラクターのことを深く考えて。」というアドバイス。よく聞くと思うんですが、これってほんとに言うは易しで、実際はとても難しいことだと思います。

今回の作品も編集者さんからそう言われている状況でした。
しかし「キャラクターのことを考えて」とアドバイスが出てきてしまう状況は、それでは解決できないもっと奥にエラーが起きていると感じます。

正常に物語ができているときは、あえてキャラクターを「考えよう」なんてしていなくて、自然とそのキャラを「考えたくなって」しまうはずです。しかしそれができていないということは、まず大前提として必要な「作者のキャラクターに対する興味」が失われている、ということ。

この状況ではいくら考えたところで、そのキャラの設定を決めることができません。

たとえば仮にここにA君という人がいて、「このA君の過去を考えてみてください」と言われた時に、もしかしたらA君は昔いじめられた経験があったかもしれない。もしくは逆にいじめっこだったかもしれない。

仮にA君の過去を決めるとして…A君のこれまでの生き方のいろいろなパターンを頭の中で巡らせることはできるかもしれませんが、暗い人生だったのか、ハッピーに生きてきたのか、架空の人物なので無限に考えることができてしまいます。結局どういうやつにするのか、決められなくないですか?

深く考えて、リアルに考えて、いじめがとても辛かったということを作者が理解したとして、そうしたところで決め手にはなりません。ああこいつはこういうやつなんだな…ということが分かるだけです。

大事なことは「作者がそこに興味を持てていなければ何も意味はない」ということです。

大事なのは「こんなやつだったらいいな」という感覚

ずっといじめられて辛くて、それでも頑張ってた。こんな過去を背負ってたら「いいな」と作者がそのキャラを気に入る感覚。なにより大事なのはこの作者の心の動き、「興味と関心」です。

そしてキャラクターに興味関心を持つ方法は二種類です。

一つは他者としてめっちゃ愛せるということ。こんなやつだったら「萌える…!」とか「尊い…!」とか「痺れる…!」とか、そのキャラを気に入って好きになれるということ。

もう一つは自己投影です。自分を重ねて、強く自分の辛かった経験、そしてそこで味わったどうにもならない想いを、キャラにも持たせること。自分がほっておけない想いを内包するキャラにすること。

興味も関心もないキャラクターに対して、掘っていったところで何も生まれません。大事なのは「作者自身が何に関心を持っているのか」本当によく考えるべきは、キャラクターではなく「自分の心」です。

心が死んだら漫画は描けない

これまでにも何度もお話ししていますが、作者の心がしっかり動かないと、キャラクターのことだけ考えてもまったくうまくいきません。

とくに商業の世界に入ると、どうしたら「編集者が」気に入ってくれるんだろう…というように、価値基準を自分以外にしてしまったりします。これは本当に怖いことです。

「編集者が萌えているキャラ」や「編集者が気持ちを重ねるキャラ」をあなたが生き生きと描けるなんて、絶対にないはずです。しかし分かってるつもりでも、評価を求めて、心は狂っていきます。

またちょっと踏み込んでしまいますが、漫画を描く人は厳しい家庭環境で育った人も多く、自分の心でなく、他人の顔色によって物事を決める、ということに慣れてしまっている人も少なくないと感じます。

自分の心が何を求めているのか知る、ということも、簡単なことではないと思います。しかしそこを見出していかないと漫画はできませんし、見出していくことができたら、きっと長い呪縛からも救われることができると思います。

自分自身が「こんなキャラだったらいいな」とか「こんなキャラであってほしいな」とか、しっかり気に入ること。その感覚を思い出すこと。
絶対に忘れたくないことです。何度でもお伝えしていきますね。

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