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漫画業界で静かに進む、編集者が口に出さない大変革。

こんにちは、東京ネームタンクのごとうです。
東京ネームタンクはこの2020年10月で最初の講義から5年が経ちます。この5年間は漫画を取り巻く世界に注目し続けてきました。

この2020年10月というタイミング。コロナの蔓延から半年。

今漫画業界は大きく変わる転換点だと感じます。それも静かに…音を立てずに。なぜ大きな音がしないのかって、それはきっと編集者さんの周囲に大人の事情がたくさんあって、表立って言えないことが多いから。

5年間やってきたこと

僕はこれまで、漫画に挫折する人を一人でもなくすよう、漫画作りは本来楽しいものだったよね、というのを伝え続けてきました。5年間やって、受賞や掲載は、申告いただいただけでも130件以上。皆さんの頑張りのためでしかないですが、思った以上の成果も出せたと思います。

しかし5年前に考えていたことと、今の現状に大きなズレがあります。そうやって結果を出して、みんなを商業の現場に送り出せば、あとはそれぞれの漫画家として描き続けられるかと思っていました。しかし今、その先で苦しんでいる人が多すぎる。

商業漫画の世界が、僕が思ったよりずっと早く崩れていっているということがその背景にありそうです。なぜ今商業の現場が崩れていっているのか、お話ししたいと思います。

今静かに起きる新規編集部の設立ラッシュ

単純に「漫画を読める編集者の不足」に原因があると思います。

今編集部の誰に聞いても、編集者が足りていないと言われます。なぜそのようなことが起きているのか。実はひっそりと新しい編集部がたくさん立ち上がっていて、そこに人材が動いているからです。

どこが編集部を作っているのかというと、「電子書籍ストア」です。

ピッコマ、Line、めちゃコミ、BookLive!、ebookjapan、Renta!、honto、まんが王国、コミックシーモア、Kindleなどなど…日本には100を超える電子書籍ストアがあります。漫画で課金するシステムを持っているウェブサイトやアプリですね。

漫画市場に詳しい人は、今このストアが売上を伸ばし、お金を持っていることを知っていると思います。ピッコマ、LineがAppの売上ランキングの一位、二位ですからね…!

そしてその電子書籍ストアが求めているもの、それは「オリジナル漫画」です。

電子ストアは限定配信がしたい

今電子書籍のストアが欲しいと思っているのが、自社のサイトやアプリだけで「限定配信できるコンテンツ」つまり漫画です。

今の電子マンガは、だいたいどこのアプリでも、同じ作品が読めますよね。これは出版社から漫画を預かった電子取次が、多くの電子書店に渡しているからです。

どのアプリでも読みたい漫画が読めるなら、ユーザー的にはどれでもいいや、となってしまう。ストアがユーザーを増やすためには「ここでしか読めない」ヒット作品が欲しい。

これまでは電子ストアが出版社に働きかけて、優先的に配信できる漫画作品を作っていました。でも出版社はあまり乗り気では動いてくれない。なぜなら出版社は多くの書店で出した方が売上が上がるので、ストアを絞る必要がないからです。

・電子ストア→限定のオリジナル漫画が欲しい
・出版社→多くの書店に出したい

お互いに求めるものが…真逆!

電子ストアが自ら作ろうとするのは必至

そこで電子書籍ストアは、じゃあもう自分たちで作っちゃおうよ、となる。そこで今、新しい編集部が次々でき上がっています。影で…

なぜ影なのかというと、おそらく出版社との関係も悪くしたくないからだと思います。出版社から漫画が来なくなってしまったら困りますからね。競業してる訳ではないよ、という体面を保ちたいのではないでしょうか。

そしてその新しくできたたくさんの編集部に、編集者は散らばっていると感じます。本当に転職祭りと言ってもいいのでは…みなさんかなりお名刺変わりましたよね。本当に激動なのだと思います。

しかし当然ここも、大きな声で編集者をスカウトしているとは言えないはず…だから静かなのですよね。当然引き抜かれた編集者側も何も言わない。静かに大変革が起きています…!

とにかく今は、漫画作りの現場そのものが変わって、新たな形に再生しているところです。打ち合わせの現場が成熟するのは、おそらくまだまだ先になると思います。

転職が多いと、技術の継承が行われない

自分が転職するかもな、とか、部下も同僚も転職するかもな、という状況では編集技術を継承することも難しいと思います。編集部の人に聞くと、誰もが若手編集者の育成ができていないと言われます。

しかしそもそも、編集者というのはお互いの編集方針を尊重して、あまり漫画の読み方に対して指導したり、というのは少なかったとも聞いてます。

そういう意味では、新しい編集部、特にゲームなどデジタルに強かった会社が始めている編集部は情報共有など力を入れていそうなので、今後は変わっていくかもしれません。そのために力のある編集者を集めている、というのもあるでしょうから。

漫画家と話す、ということが、一つのとても難しいスキルなのだと思います。だって僕ら…お話しするのやや苦手ですもんね。(だから漫画を描いてる…)

ここはこちらも変わっていかなくてはならない部分だと思います。苦手なものはどうにもならないので、うまく役割分担するとか、今ネームタンクでは分業制を進めてます。編集部やストアの要望を聞き、漫画家言語に翻訳し伝えるのは、それ専門の人が必要だと思います。

変化の時代に漫画家はどう生きるか

編集者と二人三脚で漫画を作って…というのは古いやり方になっていくのかもしれません。もっと効率のいいやり方を、新しい編集部は求めています。

東京ネームタンクでも新しい漫画作りの現場を作るべく、今様々な活動をしています。「まんが奨励会」では「商業プレゼンチャレンジ」など、みんなで漫画の企画を集め、ブラッシュアップし、編集者にプレゼンし、その場で連載を決めていく…そんなダイレクトなやり方を始めてます。

投稿して、持ち込みして、編集者に見てもらって…というのがもう通用しないかもしれない。これまで通りのやり方だけでなく、新しい漫画作りの「今」にしっかりとアンテナを貼って欲しいです。僕からも引き続き、情報渡していきますね!

この静かな大変革の後に何が来るのか。大嵐の前の静けさなのか…そうだとした時に自分はどの船に乗るべきなのか。急に迫られる時が来るのかもしれません。

次の5年に向けて、僕もなるべく揺らがず、高機動な船を作っておきたいです。みなさんどうぞよろしくお願いいたします!

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