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漫画の描き方|ネームがお金にならないので取り組めない #015

編集部で担当がついて、次回作の漫画の打ち合わせをする。そこを仕事の始まりと捉えるなら、そこから先に作っていくネームにお金が支払われないのはおかしい!という声もよく聞きます。

今回も相談者の方からこんな声が届きましたのでお答えしていきますね。

本腰でストーリーマンガネームを描きたいとずっと思っているのですが、そのネームにかける時間が確実にお金になるという保証が無いので、中々描けずにいます…。本気でネームにとりくみつつ、その時間が確実に月給になる方法は無いのでしょうか?

まず月給で漫画に取り組めるところかあるか?

月給で漫画に取り組める場所があるか?というと、こたえは「YES」です。
この時代いろいろな場所で新しい漫画制作の形を試しているところがあります。僕がすぐに思い浮かぶものを2つ紹介しますね。

RouteM
コミックスマートが運営するマンガ配信プラットフォーム「GANMA!」での作品連載、制作報酬金10万円~の提供、契約者全員への液晶タブレットの貸出、専属アシスタント制作支援、単行本・映像化などの総合プロデュースなど、あなたが創作活動に集中できる環境を提供いたします。

漫画アプリのGANMA!は専属契約に近い形で月10万円からの支援を行なっているようです。このような取り組みは移り変わりが激しいので、ご自身でのご確認をお願いします。

こちらはGANMA!の編集者と打ち合わせて「この企画でいける!」となったところからRouteMに入ることができ、そこから連載までの期間支給される…とのことでした。注意しなくてはいけないのが、著作権がGANMA!持ちになってしまうこと。また専属契約に近く、他の編集部に企画を持ち込むことができません。

もう一つサイバーコネクトツーの漫画プロジェクトも月給制です。
ゲーム制作に近い形で漫画を作る取り組みです。

こちらはとっても精力的、漫画大好きでご自身も『チェイサーゲーム』の原作をされている松山社長が進めています。ツイートにもありますが、まさにお給料を貰って漫画をお仕事する新しい取り組みです。

当然対価を得るならそれなりの価値が必要

「RouteM」ならまず、GANMA!の編集さんがこの企画を連載まで持っていきたい、と思う必要がありますし、サイバーコネクトツーも安定してプロとしてのネームと原稿が作れる前提での募集だと思います。

どちらにしても、これから作るネームに価値があると認められるからこそ、そこにお金が発生するんですよね。

実は最初に紹介した「仕事なんだからネームも制作費を請求したい」というのも、普通に可能なことではあります。漫画家は個人事業主なのでまず出版社と契約書を結んで、ネームの実作業代金を請求するようなことも、やろうと思えばできるはずです。

ただし、日本の出版社には現在のところそういう慣習がありません。これは2015年の佐藤秀峰先生のツイートですが、2020年の現在も何かが変わった様子もないままです。

そしてこの現状はまだなかなか変わらないと思います。それは漫画家が「編集者に育てられる」という状況があり、ネーム作りが授業の一貫、のようになってしまっている面があるからです。

まだ自分の漫画が商品として未熟な段階からアドバイスをもらい育ててもらう、ということでは、なかなかそのネームの作業料を請求することに躊躇してしまいますよね。

ただ僕はやはりこの形は変わっていかなくてはならないと思っています。そのためにまず、漫画を自分で作れるようになる力を漫画家自身の手に取り戻していく活動に力を入れています。そうでないと出版社と漫画家の対等な関係はいつまでもやってこないからです。

現実的にはネームのコスパをよくしていく

質問にあった「本腰を入れてネームに取り組みたい」ということですが、ここにはネームというものがとても重いものである、という意識がありそうですね。まずこの意識を変えてみるのはどうでしょうか。

たとえば32Pの読み切り漫画のストーリーが1時間でできてしまうものだったら、どう思いますか?そしてそのコマ割りも2時間で大筋できて、1日休みがあれば完成する。そういったものであればもっと気軽に挑戦できそうです。

そして実際にストーリー作りを学んでいけば、今あげた時間での制作は可能になります。しっかり物語構造をマスターすることができれば、読切ストーリーは早ければ20分時間をかけても1時間でできあがります。

「本腰を入れてネームに取り組みたい」
本腰を入れなければできないもの…という発想こそ、今取り組めない原因ではないでしょうか。

「ネーム作り」よりも「ネームの学び」に時間を取る

「本腰を入れて描きたい」というのはきっと、編集部で企画を通すまでをじっくりやりたい、ということを指しているのだろうと思います。ただこれは、じっくりやれば通るものなのでしょうか。

粘土から美麗なフィギュアを作り出すようなことを想像してもらいたいのですが、素人がいくら粘土をこねこねしても、そこから偶然美麗なフィギュアが生まれて、お店に並ぶことはありません。まずはしっかり彫塑の技術を身につけて、無駄に粘土をこねこねする時間をなくす必要があります。

ネームをこねて編集部に通そうとするのは、この粘土こねこねに似ていると思います。いくらこねても、腕前が未熟な状態では通りません。こねこねし続けることで腕前が上がればいいのですが、なかなかそうもなりません。

「本腰を入れて描きたい」なら、描くよりまず「学ぶ」のが先だと思います。「本腰を入れて学ぶこと」実はひたすらネームに取り組むというのは、もう一つ先の段階ではないでしょうか。

しっかり学んでネームの量産が苦でなくなれば、編集部との打ち合わせにかけるコスパもよくなり、いずれ企画も通るはずです。本当に本腰を入れて「描く」のはその段階からようやく始まります。

▼物語の仕組みを知る「ネームできる講座」
https://nametank.jp/name-dekiru-class-2/
▼物語を自在に操れるようにする「まんが奨励会」
https://note.com/nametank/circle
▼noteマガジン『漫画家のいろはマガジン』
https://note.com/nametank/m/mc263630666f1
▼Q&Aサイト『漫画家のいろは』
https://iroha.nametank.jp
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