
漫画家になるには|コマワリのコツは不自由さの追求 #003
こんにちは!東京ネームタンクのごとうです。マンガスクリプトドクターも名乗っていたり、最近は村長でもあります。
またもう一つ、宇宙兄弟の編集者として有名な佐渡島さんと「コルクラボマンガ専科」という未来の漫画家育成の場所で講師もしています。
今日は第二期の「コルクラボマンガ専科」3回目の講義で「コマワリ」についてお話ししたのでその発展のお話をしたいと思います。
自由さこそがコマワリ最大の障害
なにも描かれていない正方形の枠に「自由に描いてください」と言われたら、それはとても難しいことだと思います。
しかしもしそこに「守らなくてはいけないルール」があったらどうでしょう。
「愛をテーマに」と言われたら、じゃあ家族を描こうかな、とか、さらに「一色だけで」と言われたら、じゃあ赤いハートマークしかないか、とか…
自由さは減っていくけれど、考えるのは楽になるのではないでしょうか。
ルールが増えるということは、不自由ですが楽に楽しくなることでもあります。
僕はコマワリに苦労している人は、このルールに乏しく、自由すぎるがあまりに絵が決まっていかない、ということがあるのではないかと思っています。
そしてこのルールは、自分で作っていかなくてはなりません。
大ゴマを使わなくてはいけない、とか、キャラのぶち抜きを入れなくてはいけない、という共通のルールはありません。自分が気持ち良くコマを割って読者にしっかり伝えられる自分専用のルールを、漫画家は自分の中に作っていくのだと思います。
他の漫画家はどんなルールを持っているのか
共通にしなければいけないルールはないものの、共通にしてもいいルールはあります。ルールを取り入れるかどうかは、知ってから決めるのでも悪くないと思います。
コルクラボマンガ専科でもお見せした、宇宙兄弟からの引用を紹介します。
©️小山宙哉『宇宙兄弟』26巻より
大きめのコマを、小山先生が見せたかったコマだと推測すると、このページでは2コマ目の「宇宙船切り離しのエフェクト」とページ下部の「クルーたちの様子」でしょうか。
まず2コマ目は、この絵を引き立てるために、1コマ目の宇宙船からやや角度を変えて、変化をつけつつ時間経過を表現し、たっぷり見せるようにできています。
またページ下部では、淀みないクルーたちのやりとりを「流れるような曲線」で表していますよね。そしてその曲線を引き立てるために、3コマ目のフキダシの配置は直線的になっています。
©️小山宙哉『宇宙兄弟』26巻より
今度は構図に注目しましょう。
何かが「連続する」というのは絵になります。1、2コマ目は「パネルがグラデーションのように広がる様子」3コマ目は「同じ大きさのものが均等に並ぶ様子」で絵作りしていますね。
3コマ目→4コマ目は横に並んだから縦に顔を並べた意図がありそうです。ここでは同じ横顔を並べることで、経験の違う2人の表情、感情の違いが際立ちますね。
©️小山宙哉『宇宙兄弟』26巻より
こちらは一枚絵。一枚絵を入れるときにどんな構図を選べるか。長方形の中に正方形を入れてバランスを取るのは、綺麗な構図になる一つの手法です。また対角線も美しく見えますね。
視線誘導と構図にヒントがある!
大きく見せたい場所が決まった後に、どう見せていくか。
小山先生の場合は視線の流れにとても気を使われていて、
・同じような視線の流れを連続させない
というルールがあるように感じます。紹介した1ページ目は、クルーの動きを曲線で見せようと決まった時点で、つなぎの3コマ目の絵も見えてきたのではないでしょうか。
もしここにルールが何もないと、3コマ目の絵作りに苦労します。
また構図的には
・画面分割、正方形の対角線、連続構図
にもこだわりを感じます。どのような絵を入れるか考えるときに、まずどう「ひとつの画面を割って美しい構図を見出すか」を重視していそうです。
まるで小山先生からのメッセージ
読み解いていくとまるでこれは小山先生からのメッセージですね。こういうところにこだわって美しく見せたいと思っているよ、と言う。みなさんはどれだけ受け取れていたでしょうか。
漫画家さんによってコマワリで優先させるルールは違うものだと思います。とはいえルールは増えるほど楽になる、ということを思い出し、参考にしてみるのはどうでしょうか。
・視線誘導
・画面構図
にまだ自分ルールがなかった人は、ぜひ考えてみてくださいね!
noteマガジン「まんが奨励会ニュース」ができました。
今後まんが奨励会の最新情報などお届けして参りますのでご登録どうぞよろしくお願いします。無料です。
https://note.com/nametank/m/ma0c00d316758