漫画家になるには|ネームで迷ったときに脱出する方法 #007
こんにちは!東京ネームタンクのごとうです。
前回プロットからネームに起こす方法をお伝えしました。
▼プロット→ネーム考え方解説
https://note.com/nametank/n/n23a4ceb81e22
今回も大まかなストーリーの流れができた上で、どのようにネームにしていくかをお話しします。こちらは前回より大変でした。大変だったポイントと、そして詰まった時にどう乗り越えるのか、というお話もできたらと思います。
元のストーリーは今回も「国際コミック・マンガスクールコンテスト」の作画部門の課題作品です。先日の「少年編」に引き続き今回は「少女編」です。テーマは同じく「約束」です。
こちらの動画でプロット作りも収録しています。約20分での即興シナリオメイキングです。
先に今回できあがったネームがこちら!
今回もごとうが一度ラフネームを作り、東京ネームタンク講師のえのさん(@enosirk)がブラッシュアップしつつ清書をしてくれています。かなり難しいことを頼んでしまった…うまくこなしてくれたえのさんありがとうございます…!
テーマは「約束」です。
も…萌える…!
さすがえのさん。文句ひとつない出来です!
最終ページの表情がないのは、作画部門の挑戦者に考えてもらえたいなと思って。みなさんもどんな表情入れるか想像してみてくださいね!
まずは見せ場を決めページ配分を考える
全体の配分です。のちほど1Pずつ解説します。
前回の「少年編」で注力したのは「約束をする良さ」と「意外性の感動」です。逆に今回の「少女編」では「約束を叶える良さ」と「カタルシスの感動」を重視しました。
1. クライマックスで描くべき感情を決めていく
今回のストーリーは、子供の頃に約束したプロポーズを、大人になった2人がどのように処理するのか、そこにあるドキドキを描く物語です。
まず大事なのが、具体的にはどんな約束をして、それがどんな結末になるのか、です。クライマックスの絵を具体的に思い描くためには、冒頭でどんな約束をするのかが鍵になります。ですから今回は冒頭から考えました。
しかしまず最初から躓きます。1P目で幼き日の約束を入れたいのは決まっているのですが、その約束がなんなのか、これが難しい。
A「10年後の今日、結婚しようね」
という約束にしてしまうと、10年経った日を中盤以降に描こうとしても、すぐに結婚できるわけでもないので、約束を叶えることができない。(32Pならできるかもしれないのですが今回は尺も短いので)
B「10年後の今日、プロポーズするね」
という約束だと、プロポーズとはつまり婚約、結婚の約束をすることなので、二重の約束になってしまう。結婚の約束をすることを約束することになり、だったらそこでもう結婚の約束しようよ、となってしまう。
C「10年後の今日、ここで待ってるね」
という約束だと、女の子の主人公が男の子に向かって「プロポーズしにきてね」と捉えかねられない。女の子目線の主人公で、プロポーズを積極的に待つ、という姿勢は好感度が保てない問題がある。
結局ごとうVerではCの形をとりつつ、女の子がプロポーズは自分でするものだよな、と思い込んでいるというやや説明難易度が高いカタチを取りました。これはその後えのさんとの相談で、AB混合型になります。(子供すぎて結婚も婚約もよく分かってないままとりあえず約束らしきものをした、というカタチです。)
2. 今度こそクライマックスを決める
いったんはCの形で行くと決めたので、今度はクライマックスを決めていきます。10年後の約束の場所に「いるの?いないの?いるわけないよね。けどいたらどうしよう…いたー!」という感情を描くことまでは決まってました。
しかしここで迷うのが、女の子が「プロポーズをしにいくか、されにいくか」
「いるの?いないの?いるわけないよね。けどいたらどうしよう…いたー!」という感情は、実はお互いずっと想い合ってたのかどうなのか、ついに答えが分かる。という、抑圧されていたものから解放される、いわゆるカタルシスの感動です。(感動の種類と使いこなしは「ネームできる講座」で!)
この感動において大事なのは、お互いが約束を覚えいるかどうかなので「プロポーズをするか、されるか」はどちらでも成立します。だからこそ迷う…!
一般的には男の子がプロポーズするほうが普通だし、今回は海外の学生が取り組む課題ネームになるので、国際的な常識を考えると一層そうだと思います。海外だと男性が跪いて婚約指輪を渡す印象的な風習がありますよね。
しかしこれは個人的趣向も多分にあるのですが「女の子が待ちの姿勢」だとどうにも萌えきれない。「もしかしたらあの約束の場所で婚約指輪をもらえるかもしれない」という期待をしている女の子に、どこか気持ちを乗せきれない自分がいる。
やはり「描きたい」と思うエネルギーが何より大事です。ですのでだいぶ迷ってしまいましたが最終的には、「自分がプロポーズするんだ」と、どういうわけか思い込んでしまっている女の子を描こうと決意しました。
これでようやく6P目が決まります。
彼が来るはずなんかないけど…もし仮に来ちゃったら、私、プロポーズ…するの!?という気持ちの準備ができてないのに突然自分の本心を迫られる萌え、です。
序盤から順に組んでいき6Pに繋ぐ
1P…子供の頃の約束。
2P…それから10年の状況。約束を意外としっかり覚えている。
3P…今の彼との関係性。
4P…約束を彼が覚えているか、状況の確認。
5P…6Pでのドキドキに自然につなげるためにそれぞれの思考を描く。
また今回は「少年編」でやや主人公と読者を重ねる主観的な描き方をしたので、こちらの「少女編」では2人の気持ちを描き、2人を眺めるような客観的な描き方をしました。コマ割りの絵の入れ方で操ることができます。(ネームできる講座ではあなたにあったコマ割りが分かりますよ!)
ラフネームと清書ネームを比較
今回もえのさんに課題点を伝えて相談しつつブラッシュアップをお願いしました。特に「女の子からプロポーズすること」は外せないこと。その状況を自然かつ誤解のないように読者に伝えること。そのためには他の変更は柔軟にとお伝えしました。
左がえのさんの清書ネーム、右がごとうラフネームです。
1P目、過去の約束。元では婚約を匂わせつつ約束の日だけは確定したかったのでどこかふんわりしてしまっていた。えのさん修正では、結婚の約束と日付の二つを確定させる、ネーム力をフル発揮。見事です。
自分がプロポーズすると思っていることについて、「あれは私がプロポーズするってこと?」というセリフだけでは説明が足りなすぎてここでは伝えきれない。ここをなんとかする手段をえのさんと相談して後にずらすことに。
同窓会の話題は「大人になってしまったんだ」ということに対して今彼がどう思っているのかの反応を引き出すためです。うまい!
お互いの思いが交錯する演出いいですよね…!
えのさんはもともとの作風がやや客観視よりのコマ割りなので、この描き方は僕より馴染んでいると思います。
一時はどうなることかと思ったけど…えのさんすごい…!
普通でない状況や心情があると、それがどれだけ伝わるかということの判断がとても難しいです。こういう時には描き手本人ではどうにもならないので、客観視できるまで寝かすか、編集さんや他者の目を借りるしかありません。東京ネームタンクでもネームプロット個別相談をご用意しています。
今回は時間も限られていたのでえのさんに頼みましたが、パーフェクトに答えてくれて助かりました。えのさんも個別相談を受け付けておりますよ!
優先して見せるものを見失わない
今回えのさんに相談してうまくいったのも、自分の中で「女の子の方からプロポーズする」ことを優先する、ということが決まっていたからだと思います。ここさえも変更して直したら迷宮に入り込んでいたかもしれません。
自分の中で優先するものがないと、迷いが生じた時に脱することができなくなります。まずは自分の気持ちに素直になって、気に入ってる感情に気づくこと。そしてそれを捨てないこと。
それができればいずれ道は開け、完成への一歩を踏み出せると思います。
▼東京ネームタンク「ネームできる講座」
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