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漫画の描き方|ニッチな少女漫画はどう掲載を狙うか #023

アプリ時代によって読み手にとっては漫画ジャンルの境はなくなりつつあるという話をしました。しかし掲載レーベル、雑誌レーベルの単位でいうと逆に差別化が進んでいるのかもしれません。

具体的には少女漫画です。昔は一つのレーベルの中に多様な作品があり、BLやヒューマンドラマやホラー…という作品が一つの雑誌の中に収録されていました。しかしそれぞれのジャンルはいま独立したレーベルが生まれ、移行が進んだことで、今少女漫画といえば「恋愛」一色です。

今回いただいたご質問も「命の大切さ」を描いていきたいが、少女マンガ誌の「恋愛」以外のニーズについて聞きたいとのことでした。

少女漫画が培ってきた「恋愛」はやはり強い

「恋」というものは、人間として抗えない、どうしようもないほどの魅力を持っているのだと、長くマンガを見てきて思うようになりました。

これはきっと本能に根ざしたものなのだと感じます。生物としての求愛行動のはじまりとして、恋というものは明らかに何か脳に変化をもたらす。少女漫画が好きだった人が、あのキュンキュンは麻薬のような脳汁が出ていた、と語っていました。実際なにか分泌されていたとして、生命として何もおかしくないですよね。

どんなに理性的な人でも、一度「恋」というものに火がついてしまうと止められない。「恋」という感情を人間はどうしても冷静に対処できない、振り回されてしまう、だからこそ描きがいのある永遠のテーマなのだと思います。

ニッチなテーマでそこに切り込めるか

個人的には今の「少女漫画」は「グルメ漫画」や「成人向け漫画」に近い「食欲」「性欲」など深い人間の欲求を描く一ジャンルなのではないかと感じています。

そう考えた時、今の恋愛主体の少女漫画レーベルに恋愛以外で挑むのは、グルメ漫画雑誌にグルメ漫画以外で挑む、成人向け漫画雑誌に成人向け漫画以外で挑む、のと同じレベルの難しさがあると思います。

もちろんレーベルによって様々なので一概には言えません。少女漫画レーベルもたくさんあるので、恋愛一色のものもあれば、それなりに多様なものもあります。多様な場所ならばより難易度は下がるはずです。

しかし恋愛一色のレーベルでは作戦を考える必要がありそうです。

みんなが求めているものを超えていく

今の少女漫画に読者が求めているものは、やはり恋愛なのだと思います。読者はあらかじめ読みたいものが決まっています。カレーを食べに来た人にハンバーグを食べさせて喜んでもらうにはいったいどうしたらいいか。そこを考える必要があると思います。

まず「恋愛」に少なくとも並ぶ欲求がそこにあるか。今回は「命の大切さ」を描きたいということでしたので「生存欲求」を盛り込めれば可能性は上がるかもしれません。生きたい、という欲求は恋愛に決して負けない強いものですものね。

読者がまだ気づいていない「読みたいもの」を作っていく。
今のニーズに応える作り方でないなら、この考え方がひとつ参考になるかもしれません。

スティーブ・ジョブズがiPhoneに関して、ユーザーの今のニーズから作るのではなく、作った後にこんなものを実は欲していたんだ、とユーザーに気付かせるような物作りが必要だ、と語っていました。

A lot of times, people don't know what they want until you show it to them.
人は見せてもらうまで、何が欲しいかわからないものだ。

iPhoneがない時代に誰もiPhoneを欲しがらないですもんね。ニーズからでは作れない、素晴らしい価値に気づかせてくれる作品も、きっとあるのだと思います。

「命の大切さ」を描いていく。ぜひ応援したいです。

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