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漫画の描き方|商業でうまくいかない場合のモチベーションの保ち方 #006

商業雑誌に載せていくと読者アンケートによる人気順位を聞いたりします。これが振るわないと、徐々にモチベーションが落ちて行く…ということも考えられますね。

また作品に溢れる現代、みんなの評価というのが価値を持ちます。作品レビューなどが目につきやすく、そこであまり良い評価を得られてないと、これもまた悲しい気持ちの原因となりますね。

そもそも広く大衆にウケたかったのか

レビューというもので星の数の平均が出たりしますが、この仕組みは多くの人にどれだけ広く響いたか、という指標にはなりますが、特定の人の心にいかに深く刺さったか、ということは現れてきません。

この作品に溢れる現代、漫画家の取れる戦略は2つ。ひとつはマス向きの大衆にウケる作品を目指して行くか、もう1つは自分の作品を好きだと思ってくれる濃いファンに向けて作って行くか。

人にもよりますが、後者の方が現代っぽい作り方だと思います。このSNS時代、大量の情報の中から、みんな自分の好きな情報だけを選びとって生きていくようになりました。

徐々に「みんなが好きなもの」というものが価値を失い「自分や近い周りの人が何を好きか」ということが大事になってきています。その中でいかに誰かの強いお気に入りになれるか。

自分の好きを極めてテンションを上げる

濃いファンとは何かというと、あなたの「好き」だと思って描いているものに共感してくれる人たちです。あなたが「ここがめっちゃいいよね!」と思っているものに「そうだそうだめっちゃいいぞ!」と応援してくれる人たちです。

そう考えるとまず自分は何が好きなのか、しっかり極めて表現していく必要がありますね。大衆に目を向けるのではなく自分を見なくてはいけない。

そもそもチェーン展開するような大衆向けカレーショップなのか、それともコアなファンがつくカレー屋さんなのか、みたいな話です。万人受けする味に目を向けていたら、コアなファンはがっかりしてしまいます。

もともと自分は何が好きだったのか。そこに集中し、自分と濃いファンたちと「いいぞいいぞもっとやれ!」と突き詰めていく。これはモチベーションが戻ってくる1つの方法だと思います。

それでも大衆を振り向かせるなら

それでもあなたが野心に溢れる漫画家で、より大衆に俺の漫画で夢中にさせたいんだ…!というならその心意気や良しです。もし人気が振るわないなら、テコ入れをして作品を調整する必要があると思います。

少年ジャンプでは「10週打ち切り」という言葉もあるくらいですが、人気のない作品は打ち切られてしまいます。では大人気漫画と、打ち切りになってしまう作品では何が違うのでしょうか。

これは「マンガ技術研究会」の中で会員の方が研究してくれたのですが、『ワンピース』と『打ち切り漫画』で、コマワリにどんな差があるか。比較検証した結果、そこに興味深い傾向がありました。

コマの数、大コマの比率、場面転換数などには違いがそれほどなく、では大きな違いはなんだったか。それは「表現されている感情」でした。

『ワンピース』のコマには「喜・怒・哀・楽」さまざまな感情が入っており、対して打ち切り漫画はずっと「怒・怒・怒・怒」など感情の偏りが大きい構成になっていました。

特に「哀」の感情が入っている作品が実は少なく『ワンピース』には多く入っていました。「哀」の感情には人の心を掴むポイントがあるのかもしれませんね。2020年に大ヒットした『鬼滅の刃』にも通じそうです。

より多様で深い感情を描く

よく打ち切り間際に「新キャラをたくさん投入する」という手法を見ることがあります。敵の四天王が登場し、戦うこともないまま終わって行く…

なぜこの種のテコ入れが成功しないか。これは結局新キャラが出てきたところで、またその新キャラに対しての主人公の感情が「怒」だったりする。ずっとここまで続いて来た「怒」の感情から何も変化していないんです。

『ハンターハンター』でヒソカというキャラクターが出て来たときに、それまでの王道冒険漫画の雰囲気から、なんとも言えない奇妙な空気になった場面がありました。主人公の感情に「変化」を生む。これができなければ作品の空気を変えることはできません。

実は主人公の「目的」を変えなくても、つまりストーリーの筋を変えなくても、リアクションや喜怒哀楽の部分はかなり自由が利きます。

「怒り」→「敵を倒す」
「悲哀」→「敵を倒す」
「快楽」→「敵を倒す」

というように動機の前に現れる感情はいくらでも深く突き詰められます。まずここに着目できているか。

ここで広く読者の気持ちを掴むこと。変化をさせ飽きさせないこと。
作品を続けている以上いつでもチャンスはあります。大逆転を狙って行くのもモチベーション維持の1つになりうると思います。

オンラインサロン『マンガ技術研究会』
「何があっても生き残るクリエイターを目指す」オンライン研究会です。
これまでの研究まとめも全部アーカイブされてます。
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