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漫画の描き方|紙での単行本にならない縦読み漫画について #010

縦読みのスクロール漫画、という新しいジャンルがあります。ウェブトゥーンとも呼ばれますね。縦に読んでいくのでスマートフォンで読みやすく、中国、韓国ではすでにマンガ体験として主流で、ビジネスモデルもしっかり構築できているようです。

「日本で縦読みスクロール漫画が来るのか?」ということもよく話題になります。これからの時代縦読みスクロールだ、という人もいれば、日本では流行らない、という人もいます。僕自身がどう考えているかということを先にお話ししますね。

縦読み漫画の特徴

僕自身はウェブトゥーンの読書体験の違いから、そもそも別ジャンルとし発展していくのではないかと思ってます。縦読みの漫画は、見開きの漫画を縦に配置していったでけではなく、表現の仕方が全然違います。

具体的には「間」をたっぷりと取ることで、「物語の中の時間」と「読者に流れる時間」がシンクロします。見開きの漫画では2Pで物語内の時間が半日経つのは普通のことですが、縦読みの漫画は読者と時間を共有し、極端に言えば物語を1分進めるなら、読者も読むのに1分かかる、そんな感覚です。

とても映像に近い体験になってます。このことは読者にしっかりと物語への没入感を出し、主人公の気持ちに寄り添って体感させる効果があると思います。

しかし逆に言うといくらフリックしてもなかなか物語が進まないので、見開き漫画になれている人は、話の進まなさにイライラするかもしれません。指が疲れるともよく聞きます。

これは縦読み漫画がまだ新興で、表現が成熟するにあたり解消されるのか、もうそういうものなのか、これはまだ判別できません。

未来はどの時点を見るかで変わる

まったく読書体験が違うものなので、僕は見開き漫画を読んできた人や好きな人、がこの先ウェブトゥーンに切り替わるか…というとそういう未来はあまり見えてこないと思います。

じゃあウェブトゥーンが来ないかと言うとそうではなくて、違うものとして受け入れられていくのではないかと考えています。どちらかというとマンガとアニメの関係に近い、親和性はあるけど別のもの、というイメージです。

数字を見ると日本でも「めちゃコミック」などすでに多くのユーザーに読まれているそうです。でも今のところ僕の目の届く範囲で縦読みにはまっている人を多く見かけません。これは僕が見開き文化の強い場所にいるからと思います。

漫画が好きでよく読む人が、案外アニメを見ていなかったり、その逆もしかり、漫画もアニメも両方好きで見る、と言う人が実は多くないように、やや交わりつつも「第3のジャンル」として確立していくのかな、と想像しています。

しかしそれも僕が見ているのはこれから10年くらいの話です。世界を見ている編集者はもっと力強くウェブトゥーンが来ると言う人が多いです。これは僕とは見ている未来の遠さも違っていると感じます。30年後に日本のマンガ文化がどうなっているか。みなさんはどう予想するでしょうか。

単行本にならない、縦読みマンガについて

ようやくご質問いただいた件です。そもそも縦読みマンガは読書体験が違うので、単行本にしにくいですね。まず単行本にするのに一手間かかります。

また僕は「所有体験」も違うことに興味を持っています。単行本の良さのひとつに「所有する喜び」もあると思います。Amazonキンドルやイーブックジャパンなど、電子書籍としてもアプリの中で本棚を作り、所有体験を重視していることが分かります。

一方で縦読みマンガはいまのところアプリ、サービスとしての側面が強いのではないでしょうか。僕はどちらかというとソーシャルゲームに近い体験に感じます。所有ではなく「体験する時間」を買っている。

ソーシャルゲームは開発する人のモチベを保つのが大変だと聞いたことがあります。これまでのコンソールゲームは形として残り、ゲーム機を取っておけばいつかまた遊べるし、思い出のBGMを聞くことができます。

しかしソーシャルゲームは一度サービスが終了してしまうと、せっかく作ったものにまったく触れることができなくなってしまう。将来消えることが分かっているものを開発するのは、たしかに気持ちを入れにくいかもしれませんね。

作品との付き合い方が違う

僕らの世代にとって、紙の単行本は時間の詰まった宝箱で、枕元に置いて5分読み返して物語の世界に入って楽しむ、そんなものだったように思います。でも先に書いたように、縦読み漫画は5分読んでも5分の体験です。

縦読みマンガは宝箱というよりむしろスマホそのもの。相棒のような存在で、電車での通学通勤時間、休み時間に、読者と一緒の時間を過ごすものなのではないでしょうか。青春時代にあの漫画と同じ時を過ごした、みたいな思い出され方をするのかもしれません。

単行本化についても、これまでと同じモノサシで考えるわけにはいかないと感じます。読者に何を提供し、どうマネタイズするかも含め、改めて考えていく必要がありそうですね。

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