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漫画家になるには|プロット→ネーム考え方解説 #006

こんにちは!東京ネームタンクのごとうです。昨年末にクリップスタジオのセルシスさんから依頼を受けて、国際コミック・マンガスクールコンテスト「作画部門」の課題ネームを作りました。

ストーリーをどのように作ったかはこちらの動画でリアルタイムに作ってます。20分ほどで8Pのストーリーを作っています。

今回はそのプロットからどうネームに起こしていくか、思考の流れを順を追って解説します。

先に今回できあがったネームがこちら!

ごとうが一度ラフネームを作り、東京ネームタンク講師のえのさん(@enosirk)に意図を伝えつつブラッシュアップをお願いしてネームを描いてもらいました。さすがえのさん!圧倒のクオリティです。解説は後ほどいたしますので、まずは完成ネームを読んでみてください。

テーマは「約束」です。

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ストーリーからネームに起こしていく流れ

全体配分がこちらです。あとで1Pずつ解説します。

少年向けネームまとめ

まず今回の8Pネームをお届けするにあたり、こちらの「少年編」で注力したのは「約束をする良さ」と「意外性の感動」です。逆にまた次の機会に紹介する「少女編」では「約束を叶える良さ」と「カタルシスの感動」を重視しました。

1. 後半のページの割り振りを考えていく

今回は「意外性」を重視したかったため、相棒風の男が実はラケットであったことを示すのをページめくりの6P目に用意しました。パターンとして2パターン考えられ、

・約束をした最後に実は男はラケットだったと読者に気づかせるパターン
・ラケットと気づいた後に、約束を交わすパターン

今回はテーマが「約束」であったために、約束をする良さをより強く演出したく、後者を取りました。

また「約束」というのは、とても静かなのでそのままでは絵になりません。ですから何か力を込めて約束する。そのために渾身の力でラケットを振りながら約束する絵を思いつきます。ここまでで6、7ページに入れるものが見えてきました。

2. 序盤・中盤まで戻ってページ割り振りを考える。

中盤では人物同士の対立が描かれます。今回で言えば「ラケットを使い続けたい男」と「捨てさせたい男」です。ここも言葉での言い合いでは絵になりません。ですので、せっかくのテニスですし、ラリーをさせながらお互いの主張をぶつけることを考えます。

3Pあたりで強く意識しているのは最後のコマです。「こいつを使い続けることが一番に決まって…」というセリフで「ラケットを使い続けたい」という思いをしっかり読者に伝えること。これがこの8Pネームの軸になります。

対立の後、5Pあたりは主人公の本当の気持ちや深い部分がさらけだされる場所です。8P漫画ではここで心情を深掘りする余裕はありません。ですのでただ一つ、「本当は全部分かっていた」という新事実を読者に伝えます。

そこまでできたら最初に戻って1P目です。1P目は、どんな状況であるのか、キャラクターや舞台など情報を伝える場所。ここも静かな導入だと絵として映えないので、最初から2人でラリーをしている場面から入ることも一度は検討しました。

しかし今回それをやると、

・中盤のラリーを考えるとひたすらラリーが続くことになる。
・2人の関係性を理解しにくい
・壊れかけのラケットに思いを馳せる雰囲気の良さが出ない。

とデメリットが多く、今回は静かな物語の導入を採用。これで1P目が決まります。こんな感じで割り振りは決まりました。

3. 実際にコマを決めていく

ここから先は僕のラフネームとえのさんの清書ネームでの演出の違いに着目しながら、総じてやろうとしていることを解説します。

左がえのさん清書ネーム、右がごとうラフネームです。

えのごとう比較(少年) P1

えのさんにブラッシュアップをお願いした時点で「分かりやすさ」を重視してほしいとリクエストしました。

ラリー相手がラケットだったというのは、読者に伝わりにくいだろうという認識を持っていたのですが、1人で時間をかけるより客観的に見れる人に修正してもらった方が早いと思い任せました。(案外こういう割り切り大事だと思います。客観性が欲しかったら意図を話して他者に見せるのが一番!)

えのごとう比較(少年) P2

全体的にえのさんネームの方が状況がしっかり伝わると思います!あと絵がうまい。

えのごとう比較(少年) P3

顔を正面から捉えるかどうかで、主人公に読者の気持ちを重ねるか、それとも主人公を眺めて気持ちを想像するか、やや見せ方が変わります。ここは作風の違いがほんのちょっと現れていて面白いです。

えのごとう比較(少年) P4

このあたりのラリーはえのさんがうまくやってくれるだろうと思って自分でも何描いてるのかよく分かってなかった。

えのごとう比較(少年) P5

ここはごとう演出ではやや主人公より、えのさん演出ではややラケットさんよりの心情描写ですね。えのさんはリアルな現場の生の空気を感じます。僕の方はもはや心象世界とも言えます。

えのごとう比較(少年) P6

ここも2人のやりとりを眺めるのがえのさんの描き方。対してごとうはやや主人公目線です。

えのごとう比較(少年) P7

えのさんの動きの表現での見せ場の作り方いいな〜と思いました。このあたりはこれまでどんな演出ストックを溜めて来たのかで変わってきますね。

えのごとう比較(少年) P8

えのさんは最後に表情を見せないことを悩まれてましたが、僕は好きな演出です。

どこを絵として強く見せるか決めていく

ページの割り振りが終わったら、あとは1P単位でどこをどう魅力的に見せていくか決めていく。そしてそのコマを中心に組み立てていきます。

その魅力的に見せるポイントと見せ方が違うので、ごとうとえのさんのコマ割りが変わっていたことに着目してもらいたいです。そしてこれが作家性や作風というものですね。えのさんどうもありがとうございました!

今回はストーリーができあがったあと、どのようにページ配分を考え、コマを割っていくかをお話ししました。みなさんのネーム作りの参考になれば幸いです。

もう一つ「少女編」がありますので近日また記事にいたします。

最後に大事なこと

最後にひとつ要注意なのですが、ここから自分のものにするのが何より大事です。

教習所と同じで、教官の運転を見せてもらうと、なんとなくできる気になってしまうんですよね。しかし実際にハンドルを握り、アクセルを踏んでみなければ車を動かせるようにはなりません。

ぜひ自分のネームで実践してみてほしいです。

また東京ネームタンクの「ネームできる講座」や「まんが奨励会」はまさにその実践の場所です。それぞれ今の実力に合わせてネーム操作を身につけてもらっています。こちらもお待ちしておりますね!

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